稲盛和夫「誰にも負けない努力をする」

by稲盛 和夫(京セラ 創業者)

すばらしい人生を生きるための秘訣「6つの精進」を紹介する。これら一つ一つは、著者が毎日お茶を飲む湯のみに焼き付けたほど大切に扱ってきた約束事だ。実りある人生を送るために、いつでも見られるよう「6つの精進」を一覧にして手帳に収めてはどうか、このように著者は言葉を添える。

誰にも負けない努力をする

「毎日一生懸命働く」。これこそが仕事をするために、また、幸せな人生を生きるために必要不可欠なことである。

大半の人は、自分が手に入れた職種や研究内容に不満を募らせて不平不満を口にする。しかし、世の中で事を成すような人というのは、たまたま当たった好きでもない仕事を、好きになる努力をした人だ。だからこそ、まずは「惚れる」ほど自分の仕事を好きになる。人生というのは、努力をした分だけ神様からほうびが与えられるようにできている。

謙虚にしておごらず

謙虚であるということは、人格を形成する要素の中で最も大切なものである。一生懸命努力を重ねて地位も名誉も手にすると、どうしても人は傲慢になっていってしまう。必死に働いて大会社を築き上げても、その後の傲慢さで没落してしまったという事例は本当に多い。

大切なのは、成功する前から謙虚であるということだ。成功してもしなくても、「なんとすばらしい人柄よ」と言われるような人間性を身につけておかなければならない。

反省のある毎日を送る

一生懸命に誰にも負けない努力をすることに加えて、「反省する」ことを毎日繰り返せば、人格やその人の魂は磨かれていく。

かくいう著者も若い頃は傲慢になることもあった。その時には、毎日ではなくとも思い出した時に反省を繰り返すことで自分を律してきた。人に嫌な思いをさせなかったか、卑怯ではなかったか、自分さえよければいいというような言動はなかったか。一日の終わりはこのようにその日を振り返って反省することが大事である。

生きていることに感謝する

人はひとりでは生きていけない。だからこそ、「生きていることに感謝する」ことは人生においても大変大事である。今ここに生きていられるのは、空気があり、水があり、自分を支えてくれる人々がいるからだ。このように考えれば、感謝の気持ちというのは自然に湧いてくるものである。

とはいえ、感謝しろといわれても、なかなか難しいときもある。そのような場合は、「ありがたい」「ありがとうございます」と、感謝の念を口に出していれば、それは自然と習慣になり、感謝の気持ちも次第に湧いてくるだろう。

善行、利他行を積む

中国の古典に「積善の家に余慶あり」という言葉がある。他人のために善い行いを重ねた家にはさまざまな福がもたらされるという意味である。しかし、よかれと思って人のために親切にしても、それがかえって自分を苦しめる結末になるということもある。借金の連帯保証人になったばかりに自分が財産を失うことになった、というのがよい例だ。

そこで、人に何かをしてあげようとするときには、同時に小善大善についても考えなければならない。先の例であれば、借金の理由がその人のいいかげんな生活態度にある場合、「君のためにならない」と厳しく断ることこそ大善だろう。長い目で見て、本当に相手のためになることを深く考えるべきなのだ。

感性的な悩みをしない

失敗したことをいつまでもくよくよ悩まないということである。当然、失敗は反省し、二度と同じ過ちをしないと決意しなければならない。しかしそれをいつまでも悔み悩むのは、心と体の病を引き起こし、人生を不幸にしてしまう。

私たちは仕事で失敗をすると、悩んでも無駄だと頭ではわかっていながら、それでも「あれがうまくいっていればな」と考えてしまうものだ。そのようなときは、逆に自分を励まし立ち直らせることだ。そしてきっぱりと諦め、新しい仕事に打ち込むことが肝心だ。

◆著者との質疑応答

◇できないと思ってしまう自分を変えるには?

ここでは、鹿児島大学が開催したシンポジウムにて設けられた、著者と学生たちの質疑応答の様子を一部紹介する。

質問:「思い」を強い「信念」に変えるようとするとき、ぶれてしまう自分がいる。弱さゆえにどうしても「できない」できないと思ってしまう。この感情を乗り越えるための方法はあるか。

解答: 今の時代は、豊かで選択肢が多い。だからこそ、逆にかわいそうだともいえる。しかし結局のところ、様々な選択肢はあっても今決まったことに強い信念で臨む方がいい。仕事にせよ学問にせよ、どんな世界でも成功した人というのは脇目もふらず一生懸命打ち込んだ人に他ならない。

◇1日24時間をどのように使えばいいのか?

質問:人類に平等に与えられているとわれる1日24時間という時間を、著者はどのように使っているか。

解答:何時から何時までこれをするといった意識はなかった。ただし、「今日すべきことは絶対に今日済ます」ということは強く心に誓っていた。生き方において、絶対に後へ残さないという姿勢を貫いてきたのである。具体的には、1年365日の内だいたいは午前様であった。もちろん、お酒を飲んでではなく、仕事をしてである。

Reference:稲盛和夫流、自分の「思い」を必ず実現させる6つの精進方法

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理系屋代表