人間の行動は、自分の目的を達成させるための手段にすぎない。
こう仮定すると、人間には、目的が達成されることを期待する「結果期待」と、そのための行動がとれるはずだと期待する「自己効力感」の2つの機能が備わっていることになります。
つまり、図のように、「結果期待」と「目的」、「自己効力感」と「行動」は連動していることになります。
また、人間は生物としてこの世に存在している以上、自己の存在を否定されることが人間にとっての最大の不幸だと考えることができます。
そうすると、自己の存在が肯定されることが行動の目的になるので、「結果期待」は、「自分という存在を肯定してもらいたい欲求」と言い換えることができます。
つまり、世の中にあるあらゆる欲求は、自分のことを自分で認めたい「自己承認」と、自分のことを他者から認めてもらいたい「他者承認」に集約されるということです。ただ、問題もあります。
「目的」と「行動」は実際に見ることはできますが、「結果期待」と「自己効力感」は個人の中にある概念なので見ることができないのです。
しかし、価値観や考え方などの「信念」と、先天的資質や能力、性別などの「個人的要因」を、「結果期待」と「自己効力感」がそれぞれ具現化したものと考えることはできます。
なぜなら、例えば、「男は女を守るもの」という「信念」を持っている男性にとって、自分の存在価値は女性を守ることにあるわけです。
そんな男性が、仮に女性を守れなかったとしたら、自分の存在は否定されることになります。つまり、「信念」は「結果期待」と同意だということです。
同様に、行動できると思っていても、体がなければ行動することはできないので、「個人的要因」は「自己効力感」が具現化したものと考えることができます。
以上のことからわかるのは、個人と社会(環境的要因)を繋いでいるのは「信念」と「個人的要因」であること。
逆の見方をすれば、社会と個人を繋いでいる「信念」を柔軟に変えることができれば、行動した結果の受け取り方も変えられるということです。
つまり、信念に柔軟性を持たすことができれば、生き方を、ひいては人生を変えることができるのです。
(今後は、上記理論及びモデルをそれぞれ、T理論、Tモデルと呼ぶことにします。これは、人間の心理モデルに目的論的(Teleological)な考え方を取り入れているためです)
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”When I was young, I used to admire intelligent people, as I grow older, I admire kind people.
ー Abraham Joshua Heschel ”
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