花咲舞に学ぶ銀行読本

花咲舞に学ぶ銀行読本「銀行が金融庁検査を嫌うホントの理由」

by ゆう(元銀行員・キャリアアナリスト)

(花咲)どしたんですか?すごい汗ですけど?

(芝崎次長)いや〜、来週うちに金融庁検査が入るんだよ〜。

花咲舞シーン①

(花咲)金融庁検査!?

(相馬)検査官が銀行にやってきて、融資先の指導やチェックをするって。お前そんなことも知らないで、よく銀行員勤まってるな。

花咲舞シーン②

(花咲)わかってますよ!それくらい!貸出先が安全か、それとも危ないか、貸出内容が適切かどうかみたいなことを調べる検査ですよね?(中略)でも私、今まで金融庁検査なんて一度も経験ないです。

花咲舞シーン③

(相馬)まあ、全国750支店のうち、検査が入るのは一遍に10店舗くらいだからな。

(花咲)じゃあ、宝くじが当たるみたいなもんですかね。

(相馬)でも、どの店に検査が入るかわからないから、どんなに小さな支店でも一応準備はしておくんだ。

花咲舞シーン④

(花咲)準備って何するんですか?

(芝崎次長)融資ファイルに抜けているページがないかチェックしたり、バラバラになっている資料を纏めたり、追加資料を作成したり。

花咲舞シーン⑤

(花咲)大変そう…。

ということで、今回は金融庁検査の話です。

銀行にとって何かと悪者扱いされる金融庁ですが、やっている業務をざっくりいうと、銀行の「経営内容」と「財務状況」を検査しています。

それぞれ簡単に説明していきますね。

経営内容検査

前者の経営内容の検査業務は、ドラマの前半に出てきたような行員の私物検査(↓)とか、

花咲舞シーン⑥

机の引き出しチェック(↓)がイメージしやすいと思います。

花咲舞シーン⑦

でも、元銀行員の視点からみると結構ひどかった(笑)

名刺や貸出稟議書の持ち出し、机の引き出しに現金や通帳、印鑑を入れておくなんてことが検査で発覚したら大問題です。

そんなことがあった日には、もうその支店には居られなくなります(笑)

なぜなら、基本的に銀行は連帯責任だからです。1人が何かやらかすと、店全体の査定に影響します。つまり、その店で働いている人のボーナスが減らされてしまうかもしれないということです。

なので、やらかした本人に異動という名の左遷がなかったとしても、その日以降何かにつけて目の敵にされ、仕事がやりづらくなるのは間違いないでしょう(笑)

でも普通は、日頃から銀行の本部や支店の課長クラスが抜き打ちで行員の鞄の中や机の検査をしているので、今回のような醜態をさらすことはないと思います。

財務状況検査

後者の財務状況の検査では、銀行にやってきた検査官が融資先のチェックや指導をします。

貸出先が安全かどうか、貸出内容が適切かどうかを調べるんですね。

貸出先が安全かどうかについては、正常先や要注意先、破綻懸念先、破綻先など銀行が評価した債務者区分が適性かどうかをみます。

また、貸出内容が適切かどうかについては、貸出債権が不良債権化していないかどうかで判断します。

ちなみに、貸出債権とは、貸したお金を返してもらう権利のこと、不良債権とは、貸出先から資金を回収できる可能性が低い債権のことで、「焦げ付き債権」ともいわれています。

なぜそんなことをするのかというと、皆さんの預金を守るためでもあるんです。

銀行は皆さんの預金を貸出に回しているので、万が一貸出先の倒産が多くなると、預金が戻ってこなくなる可能性は0(ゼロ)ではありませんよね?(関連記事:ゆう「銀行が安定しているのは預金と貸金があるから」

なので、金融庁が検査し、時には業務改善命令を出すことによって、未然にそうした事態を防止しているわけです。

また仮に、検査で債務者区分の引き下げや貸出債権を不良債権と認定されてしまうと、銀行は追加負担をしなければならなくなります。

追加負担というのは「引当を積む」とも言いますが、僕らでいうところの「保険」みたいなものです。

銀行が、企業の倒産という不測の事態で発生する損失に備えるわけですね。でも、追加負担はコストが増えることを意味します。

コストが増えれば、銀行の収益は当然減ることになります。

それだけならまだいいですが、コストが増えるということは、銀行のリスクが増えるということなので、銀行はリスクを減らそうとします。つまり、貸出先から追加で担保や保証をとろうとするんです。

もし担保や保証がを取れないということになれば、貸出の一部を回収したり、融資を打ち切るという事態になりかねません。これが、いわゆる「貸し剥がし」です。

そうなると、世間体も良くないですし、さらなる労力や経費を費やすことにもなるので、銀行としては追加負担はなんとしても避けたいんですね。

以上が金融庁検査の概要です。

まとめ

ドラマの検査官はやりすぎでしたけど、金融庁検査は、銀行業務を健全な状況に保つのに一役買っているりっぱな業務だと思います。

でも銀行が金融庁検査を嫌う理由もわかってもらえたのではないでしょうか?

事務作業が大変だからという、そんな単純な理由だけじゃないんですね(笑)

Reference:日テレ

『語録.com』『理系就活一問一答』開設者兼管理人。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、株式会社三井住友銀行に入行。個人及び法人営業にて、海外進出支援、ビジネスマッチング、事業承継・組織再編支援、M&Aのアドバイザリー等の案件に従事した他、ストラクチャードファイナンスやシンジケートローン、資産流動化等を活用した戦略の立案実行支援、新卒採用、プロジェクトマネージャーとしてリスク管理や市場部門システムの企画開発に従事。退職後は、個人事業主として、金融業界志望者向け就職支援、及び、中小企業・個人事業主向け財務コンサルティングに従事。また、株式会社ドリームキャリアでは、理系ナビキャリアアドバイザーとして、理系に特化した就職支援・採用支援に従事。現在は、株式会社コトラにて、理系学生の就職やキャリア支援の他、金融やコンサル、IT、経営層向けの転職支援を行う。理系就活支援歴は10年。大学講演含め、就活セミナー開催実績100回以上。支援学生数は1500名超。