ディーン・サイモントン「イノベーターは成功したから多く生み出したのではなく、多く生み出したから成功したのだ」

byディーン・サイモントン(心理学者)

ジョブズは、創造というものが「新しい何かを生み出すこと」ではなく、「新しい組み合わせを作ること」でしかないと指摘しています。実は、高いレベルの創造性を発揮した人物の多くが同様の指摘をしています。

たとえば、私が電通に入社した、まさにその初日に必読の書籍として配布されたジェームズ・W・ヤングの『アイデアのつくり方』にも同様の指摘がされています。ヤングは、この本で二つの原理を提示しています。

一つ目は、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」ということ。そして二つ目が「新しい組み合わせを作り出す才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存する」というものです。ヤングもジョブズも結局のところ、新しいアイデアというのは既存のものを組み合わせることでしか生み出せない、と言っているわけです。

さて、ここで重要になってくるのが、「組み合わせる情報」の数です。モデルを単純化して考えてみましょう。

ジョブズの指摘通り、すべてのアイデアは、異なる二つの要素の組み合わせによって生まれると仮定した場合、10個の知識を持っている人と100個の知識を持っている人では、組み合わせによって得られるアイデアの数はそれぞれ45個と4950個となります。

つまり、知識の量が10倍になると、その知識の組み合わせによって生み出せるアイデアの数は100倍以上になります。もしこの前提を、三つの知識の組み合わせによってアイデアが生まれるとすれば、生み出せるアイデアの数はそれぞれ120と16万1700となり、差は1000倍以上となります。

もちろん、組み合わせのほとんどは箸にも棒にもかからないアイデアになるでしょう。しかし、それでいいのです。なぜかというと、アイデアの質はアイデアの量に依存するからです。量が質に転化する、これがアイデアの面白いところです。

過去の創造性に関する研究の多くが、アイデアの質にもっとも大きな影響を与えるのは、アイデアの量だということを明らかにしています。確かに、過去の偉大な芸術家や発明家は「質」だけでなく「量」においても図抜けた実績を残しています。

ピカソは2万点の作品を残し、アインシュタインは240本の論文を書き、バッハは毎週カンタータを作曲して、エジソンは1000件以上の特許を申請しました。面白いのは、彼らの残した知的生産のすべてが必ずしも傑作だというわけではない、という点でしょう。

たとえば今日演奏されるモーツァルトやバッハ、ベートーベンの曲は全体の3分の1に過ぎませんし、アインシュタインの論文のほとんどは誰からも参照文献として引用されていません。

UCデービスの心理学者、ディーン・サイモントンは『Origins of Genius』(=天才の起源/未邦訳)という本の中で、「イノベーターは成功したから多く生み出したのではなく、多く生み出したから成功したのだ」と指摘しています(*)。

* Dean Simonton, Origins of Genius, Oxford University Press, 1999

サイモントンによれば、科学者の論文には量と質の相関関係が存在するようです。たとえば、ある科学者のもっともすぐれた論文の引用回数は、その科学者が残した論文の数に比例します。

また、サイモントンは同時に、科学者が生涯で最高の仕事をしている時期は、もっとも多くの論文を書いている時期であり、そしてもっとも「ダメな論文」が生まれる時期であることも指摘しています。

これらの指摘は要するに、アイデアの質はアイデアの量に依存する、ということを示しています。

さまざまな分野における人間の能力について「個人差のバラツキ」を考察してみると、身体的な能力にはそれほど大きな差がないことに気づきます。たとえば2017年10月現在、100メートル走の世界記録は9.58秒となっています。

一方で、日本の高校生の平均は14秒前後ですから、その差はせいぜい1.5倍程度でしかなく、大した違いはありません。これは他の競技も同様で、たとえばマラソンの世界記録は2時間強ですが、倍の4時間というタイムはアマチュアランナーとしては標準的なタイムですし、走り高跳びの2メートル45センチという高さも、その半分であれば多くの人が跳べるでしょう。

要するに、身体能力というのは世界トップクラスのアスリートと常人とのあいだでも、せいぜい1.5~2倍程度の差しかないということです。

一方で、アイデアを生み出す力は前述した通り、ストックの厚みによって簡単に100倍、1000倍という開きがついてしまいます。肉体的な能力が、どんなに鍛えたとしてもせいぜい一般人の2倍程度の能力までしか高められないのに対して、創造性というのは鍛えれば常人の100倍、1000倍といった開きがつく可能性があるということです。

Reference:ピカソもエジソンも「多く生み出した」から成功した

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就職転職コンサルタント兼『語録.com』『理系就活一問一答』開設者兼管理人。 京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、株式会社三井住友銀行に入行。個人及び法人営業にて、海外進出支援、ビジネスマッチング、事業承継・組織再編支援、M&Aのアドバイザリー等の案件に従事した他、ストラクチャードファイナンスやシンジケートローン、資産流動化等を活用した戦略の立案実行支援、新卒採用、プロジェクトマネージャーとしてリスク管理や市場部門システムの企画開発に従事。 退職後は、個人事業主として、金融業界志望者向け就職支援、及び、中小企業・個人事業主向け財務コンサルティングに従事。また、株式会社ドリームキャリアでは、理系ナビキャリアアドバイザーとして、理系に特化した就職支援、採用支援、書籍出版等に従事。現在は、株式会社コトラにて、理系学生の就職やキャリア支援の他、金融やコンサル、IT、経営層向けの転職支援を行う。担当領域は不動産金融、事業承継、再生エネルギー、製造。理系就活支援歴は10年。大学講演含め、就活セミナー開催実績100回以上。支援学生数は1500名超。 成功するために必要な8つの要素に関する名言集〜語録.com(http://career56.com/)、理系就活のプロが理系就活のお悩みを解決〜理系就活一問一答(http://rikeishukatsu-q-a.com/)、「自分を活かす」進路を選ぶ! 最新理系就職ナビ(https://amzn.to/2FaJbj8)